まいばら暮らしを楽しむ人025/村上 ゆたかさん、清美さん

●移住のきっかけになったことはなんですか?

清美さん:わたしが田舎暮らしをしたいと思ったのが、もともとの始まりでした。空き家バンクを使って探してみたりもしたんですが、なかなか希望に合う物件が見つからなくて。
それでも、だんだんと主人の絵の活動が増えてきて、作品展に出品するようになると、100号サイズの大きな絵を描くために、どうしてもアトリエが必要になってきたんです。
主人は最初「田舎はちょっと…」という感じだったんですけど、話をしていくうちにだんだん乗り気になってきて(笑)。
ゆたかさん:移住先としては信州や新潟にも実際に足を運びましたが、いろんな事情が重なって、「これはご縁がないな」と直感的に感じました。そんなときに、米原に空き家対策会があることを知って、サイトを見たら物件情報がきちんと出ていると感じ問い合わせたんです。
僕は京都出身なんですが、学生時代によくフナ釣りに行っていたのが滋賀県の高島や安曇川、安土のあたりでね。滋賀という土地には昔から親しみがあったんです。

清美さん:米原を訪れた日は、そのまま何件か物件を案内していただきました。近くの公園で、ひ孫さんと遊んでいるおばあちゃんがいて、子どもさんに「何しに来たの?」って聞かれて。
「こういう理由で、家を探してるんです」と話したら、おばあちゃんが「ここはみんないい人ばっかりなんですよ」って、温かく迎えてくださったんです。
ゆたかさん:そのとき、ふと思ったんですよね。「なんだか“もう米原にしときなさい”って、誰かに言われてるような気がするな」って。実際、こちらが無理に動かなくても、地域の皆さんのほうから声をかけてくれて、自然と輪の中に入っていけました。
そんなさまざまな“ご縁”が重なって、米原へ移住することを決めました。
清美さん:移住してきてからも、そのおばあちゃんが「この野菜はこう使うとおいしいよ」とか教えてくださって。困ったときには「いつでも聞いてね」と言ってくださってとてもありがたいです。
●米原を拠点にしてみて良かったところはどこですか?

ゆたかさん:
まずはやっぱりアクセスの良さですね。僕は水彩画家として関西や東京で個展を開いていますが、米原からだと新幹線で東西どちらにも出やすい。米原駅前に車を停めてすぐに新幹線に乗れるし、所要時間も短縮されて、むしろ便利になりました。名古屋に行くこともありますが、それも気軽になりましたね。
清美さん:
アクセスのよさに加えて、食べ物の豊かさも想像以上でした。新鮮な野菜はもちろん、魚も敦賀や舞鶴から入ったものが多くて、立派な大きさのトビウオやイシダイが1尾で並んでいたときは本当に驚きました。
滋賀って川魚のイメージだったので、まさかここまでとは思っていなくて。スーパーの方に聞いたら「滋賀県の中でも北部の方が魚の品揃えがいい」と教えてくださって、買い物に行くのも楽しみになりました。
そうそう。醒井にある「多々美家」さんのうなぎも絶品ですし、仕出し文化が今も残っているのには感動しましたね。都会だとすぐに外食、という選択になりがちですが、ここでは来客時にちゃんとしたおもてなしができる体制が整っていてありがたいです。
ゆたかさん:
この前、友人たちが泊まりに来てくれた時には、みんなで布団を横に並べて川の字で寝たんです。大人なのに「子どものころに戻ったみたい!」ってすごく喜んでくれましたよ。 移住前はマンションに住んでいたので騒音の問題もあるし、食事したらすぐ解散ってなるけど、ここではゆったり夜まで楽しめる。田舎ならではの良さだなって思います。
あとね、生活リズムが朝型に変わったんですよ。前はデザインの仕事をしていたから、深夜1時とかまで起きているのが当たり前。でも今は夜10時には寝て、朝5時半起き。強制的に健康的な生活スタイルに変わりました。
というのも、地域猫が「ニャ〜」って朝ごはんを求めて挨拶に来るんですよ(笑)。それで起きて、ごはんを少しあげるんです。そしたら昼の3時ごろにもう1回、たまに彼女を連れてやってくるんです。それをうちにいる猫たちが窓から見ている光景にまた癒されます。

清美さん:
米原に来てから畑仕事や庭の手入れを始めるようになってから、まったく予定していなかったDIYもするようになりました(笑)。 小屋を解体したときに出てきた竹を再利用して西日よけを作ったり、大きな石が出てきたら庭の装飾につかってみたり。
やりはじめると楽しくて、気づいたら1ヶ月たってたりして。結局ね、「何もしなくてもいい」のが田舎じゃなくて、「やることがいっぱいあるから楽しい」っていうのが田舎のリアルなんだと思います。
●どんな方に米原はおすすめだと感じますか?

ゆたかさん:
「買い物や外食が日々の楽しみ」という方には、もしかしたら合わないかもしれません。でも、若いころから田舎でのんびり暮らしたいと思っている方や、ある程度の年齢になって「これからは自然の中でゆったり過ごしたい」と思っている方には、すごく合う場所だと思います。
清美さん:
米原には広い庭付きの家も多く、ガーデニングや家庭菜園、庭に趣味の小屋などをつくりたい方にはもってこいだと思います。
あと、田舎だと病院の心配をされる方もいますが、ご近所の80代の皆さんは、畑仕事などで身体を動かしているせいか、驚くほど元気!近くの診療所の先生も親切だそうで、なにかあればお隣の長浜市に大きな病院もありますしね。
リタイアする60代からまだまだ身体が動く20年間を、利便性を気にして都会で過ごすよりは、やりたいことをやりながら田舎で暮らすほうが、きっと豊かなんじゃないかと思うんですよね。

ゆたかさん:
会社勤めだと通勤の距離がネックになることもあるかもしれませんが、今は在宅で働く人も増えていますし、そういう人にとっては選択肢になると思います。
パン教室や小さなカフェを開くような副業的なチャレンジも、こっちだとやりやすい。都会だと店舗を借りるだけでも大変だけど、こっちでは家の一部でできてしまう。そういう“やってみたい”が叶えやすい場所でもあります。
清美さん:
あと、私たちが住んでいる地域は思ったより雪は少なかったので想像していたよりも楽でした。 断熱材をしっかり入れてもらったので、寒さもそれほど感じませんでしたね。むしろ、憧れていただるまストーブ1つで部屋中温まるので快適ですよ。
それに、米原は5月でも夜は肌寒い日があるぐらい、春がゆっくりと訪れるのも魅力のひとつだと思います。
●移住を考えている方へメッセージ

ゆたかさん:
僕たちが米原で心地よく暮らせているのは、「この人がいてくれてよかった」と思えるような出会いやご縁があったからだと思っています。 移住を決める前って、いろいろと心配事が浮かんでくると思うんですが、実際はその前に、地域の人たちが自然と橋渡しをしてくれて、気づけば不安が薄れていたという感覚がありました。
清美さん:
地域の方と自然に会話ができるようになったのも、庭仕事を通してでした。家の前が参道になっているので、朝の散歩で通られる方が「きれいなお花ですね」と声をかけてくださるようになって。 そういう小さなきっかけが、地域との距離を縮めてくれるんだと思います。
何も話をしなかったら地域への敷居はどんどん高くなってしまう。だからこそ、話のきっかけ作りを自分からできるといいと思いますね。
ゆたかさん:
とはいえ、「誰でも必ずうまくいく」とは言い切れません。たまたま僕たちはうまく地域に入っていけたけれど、それはタイミングや出会いにもよると思うんです。
でも、大事なのは、完璧に決めてから動くことじゃなくて、まずは一歩踏み出してみること。「住む・住まない」って決める前に、まずは問い合わせてみる。一度足を運んでみる。それがきっと一番の近道だと思います。
暮らしをちょっと考えたいなという入口にいる人は、一回その扉を叩いてみるのはありだと思いますね。
