005/田中秀典さん

まいばら暮らしを楽しむ人005/田中秀典さん

伊吹山の麓 国道365号線沿いで、 洋服のセレクトショップ イズントイットデザイン(!sn’t !t design.)を経営しています。

●移住のきっかけになったことはなんですか?

実家は滋賀県の東近江市。移住前は岐阜に住んでいましたが、お店を構えるため、米原市にJターンしました。移住歴はもうすぐ丸5年になります。

移住前は岐阜の大きな企業で働いていました。もともと洋服が好きで、”いつか独立して洋服の仕事がしたい”という夢がありました。2018年の1月に前職を辞め、お店を構えようと決心。候補地を考えたとき、自分と奥さんの実家の間にある長浜・高島・米原・彦根辺りがいいなと思いました。住居の検討も含め、各市の移住窓口に一斉にメールで問い合わせ。唯一返って来たのが、米原市でした。しかも、問い合わせてから30分後くらいの早さで返事が来たんです!!(笑)

その時話を聞いてくれた米原市の職員さんは、僕にとって恩人とも言える人。「こんなことしたいんです」と、事業計画を持って役所に相談に行くと、「感動しました。ぜひ米原で!!」と。市としてのフォローの前に、人間として応援したい。そんなことを言ってくれる人でした。帰りの車で、奥さんと「米原に住みたいね。」って話しました。この人のおかげで移住できたんだと思います。

店を構える場所を考えたとき、はじめは人の流れが多いことが重要だと思っていました。滋賀に住んでいても、米原は通過点でしかなく、来たこともないくらいで…。正直、優先順位としては一番下でした。
だから最初は、米原に住んで長浜でお店でもいいかな?という気持ちでしたが、結局、”ここに人が集められたら面白いのでは?”という考えになり、お店も米原で構えることに決めました。
米原には、伊吹山という大きな看板がある。黄色い車と小さい小屋がマッチする風景がSNSで話題になれば、お客さんが来てくれるのでは?と思いました。3年以内にフォロワーが1万人行ったら食べていけるかなと、インスタグラムで発信を続けました。2年半で目標を達成し、2022年12月時点のフォロワー数は11,700人になりました。

●米原市を拠点にしてみて、良かったところはどこですか?

ここで店を構えてみてわかったことは、いろんなところからお客さんが来てくれるということです。こんな場所なのに、週末には「インスタ見ました」と岡山・兵庫・大阪などの近畿全域・北陸・東海地方からも…。国道に面していることもあって、広範囲から車で来てくれます。キャンプ帰り・スノボ帰りに寄ってくれるお客さんもいます。

今では、芸能人も来てくれます。それは、”こんな場所だから”、だと思います。ロケ番組で通りかかって服を買ってくれたりもします。「いいの置いてるね」って言ってもらえる自信があるから、「来てください!」と自分からも言い、直接やり取りすることもあります。
でも、はじめに市と繋がれたことが大きかったんだと思います。何かが繋がっていくと信じて、商工会とか、違う部署にも行きました。100回中1回の反応だったとしても、その1回に意味がある!と思っているので、雑誌・新聞・TV・夕方のニュースにも、思いついたら連絡しています。最初の2~3年は特に、定休日や時間のある時は誰かに会おうと思っていました。特にこういうコミュニティでは、人との繋がりは財産になる。そういう想いでずっとやってきました。

経済的な理由は置いておいて、家族やお客さんの笑顔を演出できるのがこの場所・この箱。
ネット販売をしていないこともあって、カップルで来ていた二人が、「結婚しました」「子どもが生まれました」って会いに来てくれる。お客さんの人生にかかわることができている気がして、嬉しいです。婚姻届けを出した足で来てくれる人もいるんですよ。そんなことって普通、ないじゃないですか。お店で商品を売ってお金をいただく側なはずが、いろんなものをいただいています。普通経験できないことも、米原だから経験できている気がします。

●岐阜での暮らしと米原暮らしで変わったことは?

いろんなことが”ゆっくり”になりました。今までは週休二日で、”休日は休日!”って感じだったけれど、ここに来てからは、平日にもいろんな考え事ができます。子どもも生まれ、家族と接する時間が圧倒的に増えました。子供がかわいくてしゃーない…!!奥さんも自分も、近所でコミュニティができました。ママ友の家に行くとか今度一緒になんかしようとか、そんなかかわり合い、今まで住んでいた所ではできなかったんじゃないかと思います。

買わなくてもいいのでは!?というくらい野菜をもらいます。息子が「ブロッコリーが好き」という話をしたら、いろんな家から届いたり。たくさんもらうから、きゅうりとカボチャばっかり食わなあかん、とかもあるけど…(笑)。でも、そんなご近所づきあいが恩着せがましくないというか、さらっとしているんですよね。ちょうどいい距離感は、このへんならではなのでは?とも思います。

米原のやさしい人柄は、移住当初、近くのスーパーに行った時から感じていました。出産間近だった奥さんに、全然知らないおばあさんが「さむないか?あったかくしときや」、レジのお姉さんが「頑張りや~」と声をかけてくれて。こんなこと、今までになかった感覚で。奥さんも、ここでなら安心して子育てできそうと安心して、喜んでいたと思います。虫(特にカメムシ)と雪の多さにはキレてたけど…(笑)。

生活面で言えば、伊吹の山の方は田舎っぽく見えるのに、スーパーやホームセンター・コンビニもあります。案外、車さえあれば、県庁所在地(岐阜市)に住んでいた時よりもスーパーに行きやすい気がします。これも、住んでみて気づいたことです。

●米原はどんな方におすすめですか?

何にも知らずに飛び込んできてほしい!という気持ちもあります。子育て世帯も、若い世代も。何とかなるよって言いたいです。米原には何にもない。何にもないからこそ、他の地域で流行ってることをちょびっと参考にすればバズる可能性があるんです。「いつか独立したい」「自分でやりたい」と考えている人にとっては、土地もチャンスもいっぱい!もちろんその人次第だし、簡単にはいかないこともあるけれど、相談できる人はたくさんいます。

市役所に相談したら、実現に向けて何かしら協力してくれます。大きい市町だと、そこまで手が回らない。コンパクトな市だからこその良さです。例えば、大学生が「マルシェしたい」と言いに行ったら、市が場所を貸してくれるとか、地域のイベントを案内してくれるとか、そんなことが起こります。誰かから話を聞いて、「動いてみよう」となる役所、意味わからん!!(笑)その意味のわからなさが、素敵です。
Wワークとかテレワークをする人にとっては、新幹線の定期補助もあります。人気な地域に比べてみても、どう考えてもかかる費用が安いですよね。その分を他のことに使えます。駅チカならバスを乗り継いで…とかも無しで始発に座って本を読める。これってすごいことじゃないですか。その魅力をアピールするのが、まだまだ下手くそだな~って思います(笑)。個人的には、そういうニーズに合わせて、駅前に人が住める場所とか、受け皿がもっとあってもいいのでは?とも思います。

●田中さんから見た、米原のおすすめ度は何%?

米原のおすすめ度、生活の満足度は、100%。
…もうちょっと儲けたいけどね(笑)。

喋るしかないような店のサイズ感なので(笑)、大きな服屋さんではできないような話をたくさんします。洋服以外の話も!子育ての相談もありますし、遠方から「移住したい」と相談に来る人も。服屋やカフェなどで「独立したい」という話は、月に一回くらい聞いている気がします。そんな出会いができて、楽しいです。異業種のビジネスの仕組みを考えるのも好きだし、面白い!!勉強にもなります。
相談を受けていると、「そこでやったらええやん」って言いたくなってしまって(笑)。2年前、実際にお店の横にレンタルスペース『ヤドカリ』をつくりました。

こんな場所で!?と思われる場所でやってみて、ここでお客さんを集められたら、どこでやってもできる!ということです。自分を目指して来てくれるお客さんがいるなら、家賃30万円の観光地でやるか、この辺でやるかどっちが良いのか?ってことです。ここで始める条件は、ほぼ0リスク。楽しい気分でハードルの低い出店ができます。

移住者の中にも、「何か売りたい」「起業したい」という人はたくさんいるはず。移住+商売したい人に対して、移住体験をパッケージ化して、「半日ここで売ってみたら?」って言いたいです。僕のフォロワーにも情報を流して手伝えます。実際に店をしている僕が隣にいることで、できる話もあるでしょうし。
もちろん、中にはいきなり移住して失敗したと思っている人もいると思います。だから、米原で起業するなら何回か来て、いろんな場所で店を出して、もうちょっと反応を見てみるのも手です。難しいことがあっても、それはそれで勉強になります。いざ「来年移住するんです!!」となったとき、顔見知りや地元のお客さんがいることは、絶対強みになります。

夫婦や家族で移住してきてここで暮らす中で、奥さんが「自分も何かやってみよう!」という気持ちになる場合もあると思います。今増えているコワーキングスペースだけでなく、小売り・商売でも借りられる場所を作ること。アイディアを実現できるスペースが地域にあること。そんな場所に人を繋いでいって、”小商いのできるまち”になったらよいのでは?と思います。
それが、移住から定住に繋がるきっかけになると思っています。

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