まいばら暮らしを楽しむ人014/加藤竜真さん
●移住のきっかけになったことはなんですか?
米原市への移住のきっかけは、2012年の地域おこし協力隊の募集でした。
元々、野生動物や自然の保護をやりたくて北海道の大学に通っていたんです。その中で、増えすぎてしまったシカやイノシシを減らさないと成り立たない暮らしや自然があることを知り、在籍中には狩猟専門のゼミに通っていました。また、農家の生まれということもあり、小さい頃から田舎や自然の風景が好きだったので、そんな風景が残った場所で仕事ないかなと探していた時に「なんでもできる、地域おこし協力隊という制度が米原市にあるよ」と教えてもらいました。
米原市なら実家のある愛知県まで1時間で帰れる距離ですし、在学中にママチャリで日本3分の2周した時に通った米原になんとなく空気の良さを感じたので、大学4年生の時に応募することを決め、採用後は卒業と同時に米原へ移住しました。
近ごろの米原市地域おこし協力隊は任期3年ですが、僕が活動していた時は2年でした。 僕としては獣害対策をすることで協力隊に参加したので、集落の中で獣害対策の専門家を講師としてお呼びし講演会を開催したりしました。獣害対策のおかげで、地元の人たちが少しでも楽しく過ごせるようになってくれたらいいなという思いで活動していましたね。
現在はメインとなるレンタサイクル関連の仕事をやりつつ、集落の営農組合に参加して田植えからお米の収穫までを一緒にやったり、集落の人から頼まれた仕事をこなしたり、狩りに出たり…といろんなことに手を出してる感じです。
●米原を拠点にしてみて良かったところはどこですか?
もう、自由ですよね!山の方に行くとしがらみがあって住みにくいと思っている方も多いと思うんですが、狩りとか田んぼとかを一緒にさせてもらってる人間なので、逆に下の地域よりもしがらみがないと感じています。長年住んでいて、ありがたいことに横のつながりをつくらせてもらえたので、近所の方とお互いに助け合いながら生活することができています。
僕が住んでいる家は住宅密集地から少し離れているので、夜まで友人と楽しく騒いでても迷惑にならないのでありがたいです。電気を消せば真上には満天の星空。都会の方がお金を出さないと見れない景色や動物たちをタダで見れる嬉しさはありますね。
僕は学生時代から、自転車で世界を回って日本で見聞きする情報が本当なのかを、自分の目で見てみたいと思っていたんです。地域おこし協力隊の任期を終えた後は1年間鳥獣害対策に務め、2015年から1年ごとに台湾、ニュージーランド、インドなどさまざまな国に自転車旅へ行きました。
コロナ禍に入り海外に行けなくなった時は、国内でも自転車旅をしました。米原には中山道が通っているのでガイドの仕事の時にもよく紹介するんですね。その時にただ“この道が中山道です”と伝えるよりも、“この道がどんなことに使われていて進んだ先にはこんな難所や景色が見えますよ”と伝えられる方が楽しんでもらえるなと思ったので、街道巡りをしていました。
外の世界を知れば知るほど米原市が好きになりましたね。日本中・世界中に住んでみて、米原がやっぱり住みやすいという答えに落ち着きました。
●米原の暮らしをはじめて変わったことは?
大学を卒業してすぐが米原暮らしと特殊なので、一般の人ができないような経験や暮らしがたくさんできるようになりました。その分、一般の人ができることはできないので困ることはたくさんあります。都会の暮らしは息苦しくなりますね。
大学時代は実践的な狩猟は少なかったので、しっかり狩りを始めたのも米原に来てからになります。狩りで仕留めた動物もムダにしたくないので、年間2〜5頭くらいを自分で食べる分だけ駆除するようにしています。なので、スーパーで肉を買わなくなりました!集落に馴染めたからこそ近所で野菜と交換してくれますし、たまにお米に化けることもありますよ。
あと、里の方に信頼していただくために、大事なことは身に着けました。どこの集落でも自治会の草刈りといった集まりに参加してくれているかをしっかり見ているので、そういうところにはちゃんと顔を出した方がいいですね。あと、車のナンバー。他府県ナンバーだと“数年したら県外に出ていくな”と思われちゃうので、より信頼してもらうためには、すぐその地域のナンバーに変えることをおすすめします!
●これからやってみたいことは?
僕は経験値だけで生きている人間なので、これからは『生きる力』を次の世代に繋げていけたらいいなと思っています!技術の進歩で世の中いろんなものが便利になっているのは素晴らしい発展ですが、50年前までは誰しもができていた生きるための術ができなくなる・忘れられていくことに怖さを感じていて。だからこそ次の世代にも身につけてほしいと思い、コロナ前までは米原市と協働して中学生の受け入れを行っていました。罠の仕掛け方を教えたり、川遊びをしたりと農山村での暮らしを体験してもらいましたよ。
米原市が今後こういった活動を復活させる時が来たら、生業としてまた一緒にできたらなと思っています。
●加藤さんから見た、米原のおすすめ度は何%?
おすすめ度は100、0かな。
22歳の時に何も知らない状態で米原に来たので、周りの方にたくさん助けてもらいました。その方々に恩返しをするつもりで生活していたので、それもあって地元の方ともよい付き合い方ができているのかもしれません。
自分のやりたいことを田舎や地方で実現するには、やっぱり拠点となる地域に根付くことが大事です。まずその地域にはどんなルールがあって、住民はどんな生活スタイルなのか、どうやったら共存していけるかを半年〜1年でもいいので時間をかけて調べつつ、たて横のつながりを作って根付いた上で、やりたいことができる場所かを答え合わせしていく。今ある住民の暮らしを壊すようなことは絶対にだめ。そうすると、そもそも自分のやりたいことは地域の人が求めているのか?ということに気づけます。
市役所が移住者に話す時、やりたいことを優先してくれると思うんです。補助金の活用やサポートもやりたいことに対してのものが多い。ただ、それらを鵜呑みにして自分のやりたいことから始めると、地域に根付くことをせずに始めてしまうのでやっぱり失敗します。
僕自身も地域の夏祭りをやりたいと思って実現するまでに4,5年かかりましたね。ただ、それまでに横の繋がりを作れていたので、一軒ずつ挨拶回りして寄付金を募って開催することができました。集落に対して筋を通せるかもポイントになるんじゃないかと思っています。
『やりたいことをやる前にやるべきことをやってから』外から来た人は“やるべきこと”が分からないので、まずはそれを学ぶことから始めるのが大切だと思いますね。米原市に限らず、どの地域でも横のつながりを楽しめることが一番です!